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934 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/05(土) 22 24 08.02 ID Zy50bokd0 「よーし桐乃。俺は目をつむり手で隠しておく。さらに後ろを向いておくから風呂場から出て行ってくれ」 「はあ?!なんで後ろ向いてんの!お風呂で洗いっこしようって言ったのそっちでしょ!今さらなに?!」 「それはまあそうだけど。でもそれはお前に誘導された気がしないでもない…」 「ちょ、ひ人のせいにすんな!あたしは嫌だったの!やりたくなかったのに!それを…無理矢理アンタが…」 「ひとでなしみたいに言うな!…まあ俺が言ったのは確かだし 実際やりたかったのも認めよう」 「じゃあいいじゃん。こっち向きなよ。洗いっこしよ?」 「しよ?じゃねえよ!なんで前なんだよ!対面で洗いっことか聞いたことないぞ!普通は背中だろ!」 「交代しなくていいから一緒に洗えていいじゃん?」 「よくねえよ!俺が良くてもそっちがよくねえだろ!」 「なんで?京介水着着てるし、もちろんアタシもちゃんと水着きてるし問題ないでしょ?」 「あるよ!水着っつってもなんでだよ!なんでお前スクール水着なんだよ!」 「しょ、しょうがないでしょ!水着は全部夏物服と一緒になおしちゃったんだから!学校で使ってたこれしかなくて…」 「嘘だっ!!学校で とか絶対嘘だ!」 「うそってなんでよ!証拠でもあるの?!つかこっち向け!こっち見てしゃべれ!」 「やだっつってんだろ!あるよ!大あるよ!!」 「言ってみなさいよ!!」 「なんでネームのとこに書かれてんのが"きりの"なんだよ!普通は高坂だろ!しかもひらがなって!」 「!!しまった…じゃ、じゃなくて!ここここれは書き間違えたの!あと…じゃない!そう!PTAでそう決まったの!下の名前でひらがなでって!」 「…わかった…。わかったから。お前の苦しい言い訳をこれ以上聞くのは辛い」 「なんか釈然としないけど分かったならよし!あとこっち向け」 「あともう一つ分かった」 「なによ」 「ちょっと前に貸してもらったあのゲームが。妹もののゲーム。あのゲームの意味が」 「ギク」 「一通りプレイしてみたけど普通の作品だよ。楽しくプレイできるしキャラは可愛い。ただ一点を覗いて」 「え、えーっと」 「なぜか登場する妹がずっとスク水を着てるんだよな。日常生活でずっとって設定で。スタッフがちょっとアレな感じ」 「…」 「繋がったよ。俺が洗いっこ提案して、その後スク水妹ゲームを渡されて 今お前がスク水ということが。点と点が線になった」 「~♪」 「口笛吹いてごまかすな」 「それはたまたま!たまたま洗いっことゲームのタイミングが合っただけ!それだけ!もういいでしょ!だからこっち見なさい!」 「…何が目的だ?」 「人の話を聞けえ!!背中こっちに向けて喋るな!」 「…ひょっとして…お前俺をスク水萌えにしようとしてね?」 「ギク」 「図星か…しかし目的は分かったけど意図がわからない」 「そ、それは…その…あの…」 「もしかして それは俺が眼鏡フェチだってことと関係あるのか?」 「っ!」 「はぁ…分かったよ。お前がなんでこんなことしたのか。何を心配してるのか」 「え…」 「お前の想像どおりならこう言える。大丈夫。俺はお前しか見ていない。俺にはお前 桐乃だけだ。だから安心しろ」 「京介…」 「確かに俺は眼鏡が好きだ。でももう一つある。俺は桐乃 桐乃ってだけで萌える。萌え要素は桐乃なんだよ」 「な なにそれ…」 「コスプレすれば簡単に萌えキャラになれるけど でも誰も桐乃にはなれない」 「え…と その…」 「眼鏡に関しては…そうだな。俺の初期装備だからな。簡単に捨て去ることできるものじゃない。すまん。でもこれだけは言える」 「…うん」 「俺の萌え属性は桐乃。ずっと変わらない。絶対だ」 「…へへ。なにそれ。いいこと言ってる風なのに萌えとか属性とか。変なの。ふふ。なんかハズいし…」 「わかってもらえたかな?」 「うん。ありがと。安心した。凄く」 「そうか。よかった。…じゃあ出てってもらえるかな?ねえ?桐乃?」 「は?はぁ!?なんでそういう話になるの?!流れ的にこのまま…でしょ!?」 「流れねえよ!駄目だっつてんだろ!」 「説明しなさいよ!駄目だめってだけで納得できるわけないじゃん!」 「そ それも難しい…衣に包んで包んで言うなら 俺のリヴァイアサンが目覚めようとしてる…」 「リ?なにそれ。なんで召喚獣がここで出てくんの?」 「半分おっきしてるんだよ。前向いてお前見たら絶対封印が解かれる」 「ぜんっぜん分かんない」 「これ以上の説明は許してくれ…とにかくお前には絶対見せることができないんだコレは」 「じゃあ?じゃあなに?アタシを見るだけでもいいんだけど!それもしないってことはアタシの身体は見るに値しないってこと?」 「ちがう!ちがうよ。そうじゃないんだ。ただお前の汚れを知らない水着姿は今の俺には毒なんだ。リヴァイアサンにも」 「でも海行ったとき見たじゃん。あれは?」 「いやあれはそういう場だったから冷静に見れて…でもあれだよね。家で見るスク水って凄い破壊力あるよね。俺びっくりしちゃった」 「~~わかんないけど…ふう。アンタがそこまで言うならやめといてあげる」 「そうか…ふう。やめてくれるか」 「うん。あとでやっぱ見たかったって言っても遅いんだからね。背中こっちに向けてたこと後悔させてやる。ま 今回はこのくらいね」 「よかった…今回は?」 「当たり前でしょ。絶対洗いっこするんだから」 「まだやるつもりなのかよ…前から?」 「ま それはお楽しみってことで。次はもっと可愛い水着で悩殺してやるんだから ふふん」 「はあ…そうかよ。楽しみにしてるよ」 「うん。じゃ」 「あいよ」 「あ そだ」 「?」 「水着洗ったげる。ちょうだい」 「…は?」 「だから。今履いてる水着。ほら」 「いやいやいや。ちょっと着ただけで汚れてないから。つかお前いるのにマッパになれねえだろ」 「いいから。遠慮しなくていいから」 「いやいやいやいや。よくねえよ。俺のケツ見たくないだろ。俺が洗うって。遠慮とかじゃなくて」 「いいでしょ!ただの親切心!ほら!はやく!」 「いやいやいやいやいやい。なんでそんな語調が強いんだよ。強制的なものを感じるんだが」 「なんですぐ脱がないの!アタシが洗うって言ってんだから洗わせろ!さあ!さあ!」 「怖い!桐乃こわいよ!」 「もう!なんで言うこと聞かない!!」 「やだ!絶対やだ!嫌な予感する…変なことされるきっと!」 「…怖くないから…ほら…いいから脱ぎなさい…じゅる」 「じゅる?!じゅるってなに!?見れないけど絶対怖い顔してるよこの妹!」 「パンツを…海水パンツ…いや兄水パンツ…ふひ ふひひ」 「おかしい!ぜったいおかしい!ににに逃げないと!って!狭い!風呂場狭い!逃げ場所が!あああ退路塞がってる!」 「あーにーぱーんー」 「あああ来るな!声が近づいてくる!くんなこっちくんな!」 「くーんーかー」 「あわあわあわあああ!!」 「くんかくんかくんかくんかくn」 「いやああぁあぁあああああ!!」 終わし ラブラブちゅっちゅ書きたかったけどこういうのしか書けないです 申し訳ない ----------
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494 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/23(木) 00 23 13.43 ID 2E9teJZS0 【SS】純情純真純白乙女・桐乃 「で裏にはあたしとのツーショットプリクラ貼って、待ち受けはあたしの水着写真を設定してんの」 あたし―来栖加奈子は今日も今日とてダチの高坂桐乃、新垣あやせと会っていた。 夏休みが終わって毎日会ってっけどよ、お互いに自由な時間がカチ合わなくってさ、 ずっと一緒にお茶する時間も取れなかったんよ。 あ、ランちんは今日も欠席。 もしかしてあやせに埋められたのかとも思ってたけどよ、ケータイもつながらないイナカに帰ってただけだって。 新学期にはちゃんと学校に来てたぜ?まぁ今日はいねーけどよ。 こうしてのんびりとお茶しながら話すのは二週間ぶりくらいなんだよね。 そんなわけで加奈子も結構楽しみにしてたんだけどさぁ~ 「そんで、あいつがなに考えてるのか知りたくなって、 あたしもあいつと同じ風に設定したケータイ見せて、なんでこんなことしたと思うって聞いたの。 そしたらあいつ、『プリクラを携帯に貼るくらい・・・俺のことが好きってこと?』っていうワケ。 それってあいつは、あたしのこと好きだからケータイをデコったっていう事でしょ? いくらあたしの事が好きだからってさー、マジありえないよねーあのシスコン♪」 なんで延々2時間も桐乃のお兄さんラヴ話聞かされなきゃなんねーの? しかもなんか前より嬉しそうだし。ノロケが強くなってるし。 初めの30分くらいは懐かしさから聞いてやってたけどよー さすがに今はもう飽きて、食べながら聞き流してるんだよね。 ったくよーこれ以上おなかぷよぷよになったら桐乃のせいだかんな。 「へぇ、そんなことがあったんだ」 あやせはずっと笑顔で聞いてるけどさーあれぜってー目が笑ってねーよな。 あやせが加奈子を『おしおき』する時もあんな目してんだけどさぁ・・・・・・桐乃のお兄さん平気かな。 ・・・ん?前回お茶したときもこんな事考えてた気がするんだけど。 でもこの間の事はあんま覚えてないんだよね。 あやせに埋められる夢を見たり、 リセットして選択肢をやり直したり、 二回同じ会話を聞いたりした気がするけど気のせいだよな。 あの時は桐乃の彼氏(?)の話をしたけどよ、結局どうなったのかな? 「ねぇ桐乃ぉ」 「なに?加奈子」 「あの後彼氏とはどうなったんよ?」 「彼氏?」 「大嫌いだけど一番大事にして欲しいってヤツ」 「!!!」 桐乃の顔が一気に朱に染まる。 おぉ、おもしれー! 「ん~?その様子だとぉ、何か進展があったのかなぁ?」 「///」 桐乃は赤い顔のままモジモジする。 うわぁ、からかいたくなるようなしぐさしやがんの。 まぁからかったらあやせに埋められるからそんな事はしねーけどよ。 「言わなきゃ、ダメ?」 桐乃が上目遣いに加奈子を見る。 なにこの可愛い生き物。 これが桐乃じゃなかったら、お持ち帰りしてるっつーの。 ・・・隣の女がよだれ出しそうになってるのは気にしねー方がいいよな? 「言いたくねーならいいけどヨ。 けどぉ~加奈子にはぁノロケたがってるように見えるんだよねぇ?」 「べ、別にノロケ話なんかじゃないから!」 その慌てよう、認めてるようなもんだぜぇ? 「・・・まぁ、加奈子にはお世話になったし、あれからどうなったか教えてあげる」 ?加奈子なんかしたっけ? 「えっと、ね。あたし― あいつに告白しちゃった」 「・・・・・・」 へぇー。告白しねぇって言ってたのにしたんだ。 キゲンいいみたいだしよ、うまくいったのかな。 ところでよ、 「・・・・・・」 なんか加奈子の隣に(元)あやせの石像が出現してるんだけど。 まぁ、ショックなのはわかるけどよ? 「あ、勘違いしないでね? 愛の告白とかそういうのじゃないから」 「そ、そうだよね。桐乃がお兄―あの人にそんな事するはずないもんね」 あ、あやせの石化が解けた。 ちぇ、もう少し固まっててもバチはあたらねーんじゃね? 「うん。 あいつに、『あたしが一番じゃなきゃイヤ』って言っただけ」 「・・・・・・」 なぁ桐乃。 桐乃が気付いてないからあえて言わないでおいてやるけどよ、 それって相手からすると愛の告白だぜ? 「・・・・・・」 少なくても、加奈子の隣の(元)あやせ(黒髪の現役ヤンデレ読者モデル。生命活動が感じられないものを指す)はそう思ってるみたいだよな。 「なぁ桐乃ぉ、もうちょっと詳しく話してくんね?」 いきなりそんな事言われてもどう反応していいかわからないべ? ・・・べつに、あやせをいじめたいわけじゃねーからな? 「うん。そうだね。 えっと、どこまで話してたんだっけ?」 「桐乃には大嫌いだけど大切なヤツがいてぇ、そいつに彼女ができたけどぉ、 絶対にあきらめないってところ」 なんかあの日の会話の順序が思い出せねーんだけど、そんな話を聞いた覚えはあるんだよね。 「えっとね、あいつ結局夏休みの最後にフラれちゃったの」 「ふ~ん。 加奈子の見立てではぁ、彼女のことを大切にするいいヤツっぽかったけどよぉ、ケンカでもしたのかよ?」 「ちゃんとは話してくれなかったけど、あたしが原因みたい。 ・・・あいつさ、ちょっと前にあたしが彼氏を作るのに反対したの」 そんな事言ってたな。 ・・・あれ?反対したヤツって確か・・・ 「だからさ、あたしがあいつが彼女を作るのを反対したらあいつも恋人作れないじゃん? あいつが誰かと付き合うのなんかすっごいイヤだけどさ、告白した子はすっごい良い子なの。 すっごい良い子で、優しくて、臆病なのに必死で想いを伝えたの。 ならさ、付き合うなって言えないじゃん」 その子も桐乃にとって大切なヤツなんだろうな。 でもよ、 「桐乃がその男と付き合うって選択肢はなかったのかヨ? 『そいつと付き合うくらいならあたしと付き合えー!』って」 誰かに取られるくらいなら、いっそ自分のものにしたくなんねーの? 「それはありえないから。 あいつのことなんか、嫌いだし・・・」 よくわかんねーけどよ、なんかフクザツなジジョーがあるみたいだよな。 「でもね、後で後悔しそうになってた。 せっかく前みたいに仲良くなれたのに、あいつだって仲良くしてくれようとしてるのに、 すっごい遠くに行っちゃった気がしたの」 「自分でもイヤになるけどさ、あいつがフラれたって知ったときはほっとしたよ。 正直嬉しかった。また仲良くなれるって。 でもあいつが悲しんでる姿を見てたらムカついてきて、 あいつと一緒にフッたヤツのところに、文句を言って仲直りさせに行ったんだ」 桐乃、本当にそいつの事が大事なんだなぁ。 それにしてもよ、桐乃は人が良すぎるってばよ。 付き合って欲しくないヤツをワザワザ復縁させようだなんて普通考えねえって。 まぁ、それだけその二人が大切だってことなんだろうけどよ。 「そしたらさ、その子『あなたはそれでいいの?』って聞いてくるの。 あたしは前と同じで『いい』って答えた。 あたしは我慢するって答えちゃった」 「そしたらその子が我慢するってどういう意味かって聞いてきたから・・・あたし・・・」 「あいつに『嫌いだけど、すっごい嫌いだけど、・・・あたしが一番じゃなきゃイヤ!』って本音を言っちゃった。 それから、『彼女ができるのはイヤだけど、それより泣かれるほうがもっとイヤ。だから仲直りさせに来た』って」 泣かれるほうがイヤだから、復縁させるのかよ。 時々思うけどよ、桐乃ってカッコいいよな。 もし桐乃が男でそんなところ見せられたらホレてたかも知んねーな。 「この間加奈子たちに言ったことを言っちまったのかぁ。 よりにもよって、大切な男の前でヨ♪」 桐乃は顔を真っ赤に染めながらうなずく。 恥ずかしかったのはわかるけどヨ、それだけじゃねーべ? 「―まぁ、良かったんじゃねーの? その男は鈍感みたいだしよ、言わなきゃ絶対に気づかなかったって。 桐乃は言いたくなかったみたいだけどさ、それでもわかって欲しかったんだべ? だからよぉ、わかってもらえたから、今そんなに嬉しそうなんだろ?」 「・・・そうだね。 あいつにあたしの気持ちが知られたのはイヤだけど、 あいつの事嫌ってるだけじゃないって知ってもらえたのは嬉しい、かも」 「あいつとは長い間口も利いてなかったからさ、お互いどんなものが嫌いなのか、どんなものが好きなのか、 どんなことを考えてるのか、どんな気持ちなのか分からなくなってるんだ。 だから、あたしはあいつがどんなものが嫌いで、どんなものが好きで、どんなことを考えてるのか、どんな気持ちなのか知りたい。 それと、あいつにあたしがどんなものが嫌いで、どんなものが好きで、どんなことを考えてるのか、どんな気持ちなのか知って欲しい」 「あいつとはこれからもずっと付き合っていくんだし、あいつに好きになって欲しい。あいつの事をもっと好きになりたい。 もっと一緒にいたいし、もっと色々な話をしたい。 だからあいつに少しでもあたしのホンネを伝えられたのは、分かってもらえたのは、とっても嬉しい事だなって思ってる」 桐乃が笑う。 加奈子にはうまく表現できねーけどさ、ジアイと優しさが混じった、前に見たのとは違う、魅力的な表情だった。 なぁ桐乃。 桐乃は気づいてねーのかも知れねーけどさ、その気持ちを世界は『恋』って呼んでるんだぜ? それにしても、『もっと好きになりたい』かぁ・・・ ひひ。あとでからかってやろぉっと。 「ねぇ、加奈子。 ありがとうね」 「・・・? 加奈子ってばなにかしたっけ?」 「うん。加奈子の言葉がなくちゃ自分の気持ちを受け入れられなかったし、 あいつのためにあんなに頑張る事もできなかったかも知れない。 後で後悔したかも知れない。 本当に、ありがとう」 「そ、そんなことねーよ。 桐乃なら一人でもやれたって」 恥ずかしくなり、顔を背ける。 「ううん。何時もみたいに、どこかで怖気づいてたと思う」 「桐乃でも怖気づく事あんのかよ」 「うん。あるよ。 特に、あいつに対しては一歩を踏み出せずにいたんだ。 だから、兄貴みたいに行動するのは本当は怖かった。 ちゃんとやれるのかな、迷惑をかけてるんじゃないかなって。 加奈子にはめるちゃんみたいに勇気をもらったんだ」 めるちゃん? 桐乃、メルルのこと知ってんのかよ。 加奈子の仕事までちゃんとチェック入れてるなんて、さすがだなー。 「加奈子って格好いいよね。 もし加奈子が男だったら、あたしホレてたかも」 桐乃がフワリと可愛くほほえむ。 「バ、バーカ! 加奈子をからかうんじゃねー!」 加奈子の顔が一瞬で熱くなったのがわかる。 そういうのは面と向かって言うもんじゃねーの! じゃねーと、 「・・・・・・いいなぁ、加奈子・・・・・・」 いつの間にか復活した隣の女に埋められるからよ? 「で、話を戻すけどよぉ、彼氏との話はどうなったんよ?」 「だから彼氏じゃないってば。 えっとね、あたしが本音をあいつに伝えたら、相手の女があいつに 『桐乃の本心を知って、あなたはそれでも私を選んでくれるの?』って・・・」 おぉ!三角関係泥沼グチョグチョのシュラバじゃね? 「それで、あいつが答えようとしたんだけど、その子が倒れちゃって・・・ その子、あたしの本音を引き出すためにあいつと別れたらしいんだ。 その子本気であいつの事好きだったらしいから、その心労だと思う」 その子、せっかく好きなヤツと付き合い始めたってのに、 ライバルと同じ条件で戦いたいからって別れたのかヨ。 桐乃といいその子といい、ジュンジョーすぎねぇ? 「あたし、兄貴ならこうするって思って動いたんだ。 でもその子は倒れちゃうし、あいつはフラれちゃうし・・・ たぶんうまくやれなかったと思う」 「でも桐乃、お兄さんだって万能じゃないんだし、立場が逆でも変わらなかったんじゃないかな?」 「ううん。兄貴ならさ、やれたと思うんだ。 嘘ついて、傷ついて、嫌われて、それでも自分以外は傷つかないようにしたと思う。 加奈子も言ってたけどさ、あいつバカだから、自分がそうしたいと思ったらこっちの事情も考えずに突っ走るの。 だからさ、相手の心に遠慮なく踏み入って、助けられるの。 ほんと、あたしの兄貴があんなに―はずないってのに」 最後のつぶやきは加奈子の耳には届かなかった。 まぁ、なんとなく予想は付くけどヨ。 「でも、その、お兄さんほどじゃなくても桐乃は頑張ったと思うよ? その人も元気になったんでしょ? それに、あのお兄さんみたいにやれる人なんていないって」 「うん。分かってる。 あいつ、後であたしにお礼を言ってくれたんだ。 『ありがとな』って。 あいつがあたしに気を使ってそんな事言うはずないからさ、あいつを救う事はできたんだと思う。 それにね―」 桐乃は幸せそうな笑みを浮かべ 「あたしに彼氏が出来るのイヤだから、あたしがイヤなら彼女を作らない。 あたしに彼氏ができるまで彼女を作らないってさ。 そんな事言ったら、お互いに恋人が出来ないで、ずっと一緒にいるしかないのにね。 ホント、妹になに言ってるんだろうね。 京介ってばマジ最高のシスコンなんだから♪♪」 へぇ~結局彼女はぁ、作らない事に決めたんだぁ~。 桐乃の好きなヤツってぇ、京介って名前なんだぁ~。 京介ってぇ、桐乃にとって最高のシスコンなんだぁ~。 てか、やっぱり桐乃の大切なヤツって― 『加・奈・子?』 背筋がゾクリとアワ立つ。 ・・・加奈子は何も聞かなかったからよ、その 『誰かに言ったらブチ殺しますよ』 って視線止めてくんね? 「ねぇ桐乃、もしも、もしもだよ? 私がその人に告白して、その人が告白を受けてくれたら、桐乃はどうしてた?」 桐乃の話が一段落ついて、加奈子が追加のイチゴのミルフィーユを食べ終わったとき、あやせがそう切り出した。 「え?あやせが?」 「うん。 私がその人のことがすっごい好きで、その人が私のことを桐乃と同じくらい好きだったらどうしたのかなって」 そんなの、『あやせには似合わないって』の一言で・・・ 「・・・・・・」 あれ?本気で考えてね? 「・・・多分ね、夏休みの前なら、あたし我慢できたと思うんだ。 あいつならあやせのことを幸せにしてくれると思うし、 あいつのことは大切だけど、あやせにならいいかなって」 「じゃあ、今は?」 「・・・・・・ごめん。今は、無理」 「あいつさ、あたしに彼氏が出来ると泣いちゃうんだって。 んでさ、あたしもあいつに彼女が出来ると泣いちゃうの。 あたしさ、あいつにあたしが一番じゃないとイヤって言ったの。 だからさ、あたしにとってもあいつが一番じゃないとダメなの。 それを認めちゃったからさ、あいつにとっても、あたしにとっても、 お互いよりも大事なヤツじゃないと認められない」 「あやせのことは大好きだし、一番の親友だし、あいつと同じであたしの一番なんだけどさ、 それでも、あたし泣いちゃうと思うからさ」 「だから、今は無理」 その言葉を聞いて、あやせが上を仰ぎ見る。 「・・・お兄さんはずるいなぁ・・・」 ・・・加奈子は耳が悪いからよ、今の言葉は聞こえなかったぜ? 「ねぇ加奈子、一つ相談したいんだけどさ」 加奈子が二層のベイクドチーズケーキに手を付けたとき、今度は桐乃が加奈子に声をかけてきた。 桐乃がタノミゴトなんて珍しくね? 「なによ?」 「その、あいつとさ、もうちょっと仲良くなりたいんだけど、どうすればいいかな?」 ギロッ ・・・隣から 『なんで私じゃなくて加奈子に相談するの? 私たち、親友だよね?』 って気配を感じるんだけど。 「彼氏彼女になりたいってことかヨ?」 「そ、そうじゃなくて! 今まで何度も助けられてるし、今回あんな事言っちゃったからさ、 感謝の気持ちとか、これからどうしたいかとかを伝えたいんだケド、 どうしたらいいか分からなくてさ・・・」 なぁ、あやせぇ、あやせは 『気持ちはわかるけど、そんなことしたらますますお兄さんと桐乃の距離が縮まっちゃう!』 って顔してるから桐乃から相談されねぇっての、わかってねぇんじゃね? 「プレゼントとかどうかな? 桐乃センスいいし、服とかアクセサリーとか送ったら絶対に喜ぶって!」 あ。ムリヤリ会話に参加してきた。 変な行動される前に、なんとかブナンな方向に持って行こうってコンタンかな? 「う~ん。あいつセンス無いから服とかアクセとかあげるのはいいんだけど・・・ あいつって地味だけど素材は意外といいじゃん? だから変に着飾ると変な虫が寄ってきちゃうんじゃないかなーって」 「うっ。 確かにお兄―あの人は良く見ると優しそうだし、顔は整ってるもんね」 地味男クン、あいかわらずけなされてるのか、ホメめられてるのかわかんねーな。 あといい加減お兄さんって認めてもいいと思うんだけどよ。 「じゃあさ、あの人の趣味のものをプレゼントするのは? 桐乃なら詳しいでしょ?」 「あいつって無趣味なんだよね。 あえて言えば眼鏡なんだけど・・・ 絶対に眼鏡なんかかけてあげない」 眼鏡が趣味? どういう意味だってばよ? 「前にあたしの好きなのをプレゼントしたんだけどさ、 泣いて喜んでくれたんだけど、あんまり使ってくれなくてさ。 やっぱりあいつが一番欲しいものじゃなきゃ駄目なのかなーって」 「そうなんだ・・・ 私なら、桐乃のくれたものなら何でも嬉しいのに・・・」 あやせがショボンとうなだれる。 たぶんそいつも喜ぶんだろうケドよ、それだけじゃ駄目ってことなんだろうな。 「ねぇ加奈子、どうすればいいかな?」 そうだなぁ・・・ コツン ん?足をあやせに蹴られたような・・・ 『変な事言わないでね?』 あやせがコウサイの無い目で加奈子を見てやがる! 目は口ほどにモノを言うっていうけどよ、あやせの目ってば語りすぎじゃね? 『なんて言って欲しいんヨ?』 『私とお兄さんと桐乃で遊園地に行くとか・・・』 『それただのあやせの希望だべ? 遊園地に行くとしても、あやせがいない方が仲良くなれるんじゃねーの?』 『桐乃とお兄さんがこれ以上仲良くなったら困るじゃない』 『桐乃の相談に乗る気ねぇのかヨ!』 『あ、そっか・・・ どうしよう。桐乃の力にはなりたいけど、お兄さんとは仲良くなって欲しくないし・・・』 やっぱりあやせに相談しようとしなかった桐乃の判断は正解じゃね? あやせが隣にいるのに相談してきたのはどうかと思うけどよ。 「やっぱり、すぐに仲良くなることなんかできないのかな?」 桐乃がさびしげに顔を伏せる。 あやせとのアイコンタクトを、二人で悩んでるんだと思ったみたいだな。 「桐乃もそいつも、お互いに仲良くなりてーんならさ、そんなの簡単だって。 たとえばぁ―」 考えるフリをしてあやせを盗み見る。 あやせはにっこりと笑い、口を小さく動かす。 ウ・メ・マ・ス・ヨ♪ ・・・加奈子ってばドクシンジュツなんて覚えてねーからよ、ただの気のせいだよな? あやせの気持ちもわかるけどよ、桐乃の力にもなってやりてーんだよな。 でも加奈子は器用じゃねーし、できることは一つしかないからさ。 だから加奈子の選択肢は― A.桐乃に助言をする。 B.『二人』を仲良くする。 ⇒C.加奈子にできる事をする。 どれも一緒なワケよ。 あたしはばかだからカケヒキなんてできねーし。 思った事をするしかないからさ。 だからさ、桐乃、あやせ、二人とも― 「素直に甘えてみればいいんじゃね?」 「「え?」」 「桐乃はさ、今までそいつにワガママ言ったり、頼み事ばっかしてきたんだろ? そんでそいつはさ、イヤイヤでも桐乃を助けてきた。 そうやって仲良くなったんならさ、ムリに変える必要ないじゃん」 「でもそれじゃあ、あいつに感謝の気持ちを伝えられないじゃん」 「桐乃ってばよ、そいつにキツく当たってきたんだろ? ずっと素直になれた事ないんじゃねーの?」 桐乃が『大切な人』のこと話す時、いっつも言い回しが素直じゃないんだよね。 「うっ。まぁ、あんまり素直になれたことはない、かな?」 「じゃあよ、いきなり感謝したりとかできねーと思うんだけどヨ。 突然プレゼント渡したりするとこ考えてみ?」 「・・・たぶん、渡せないか、変な事言っちゃうか、ビンタしたりすると思う。 前のときもそうだったし・・・ 今ならもうちょっとうまくやれるとは思うんだけど・・・」 「だべ?ならさ、とりあえず今までのお礼はおいといて、 ちょっと甘えて、それに対してお礼してみるのはどうヨ?」 「買い物に付き合ってもらって、買った小物を上げたりお礼したりするってこと?」 「そうそう」 「それくらいなら、できる・・・かな?」 「ならそこから少しずつ素直になるのに慣れていけばいいんじゃね?」 桐乃はガンガン先に行こうとすっけどよ、少しずつ仲良くなるのも恋愛のダイゴミだと思うわけよ。 特に『フクザツなジジョー』があるならさ、いきなりガラッと変えても気まずくなるだけだと思うんだよね。 「でも今までもいっぱい迷惑かけてるのに、これからもまだ甘えたりしたら、嫌われたりしないかな・・・?」 「ん~相手にもよるけどよ、甘えるのは悪いってワケじゃないと思うんだよね。 最近はあんまやってねーけどよ、加奈子に声かけてくる奴らって、加奈子がロリ可愛いからよってくるわけよ。 そういうヤツらはさ、ホゴヨクっていうの? そういうのがあるから、加奈子に甘えられるのが好きなんだよね」 「う~ん。 そういうものかな?」 いまいちナットクできてねーみたいだな。 ・・・あんまり話したくねーけどヨ、しかたねーから、加奈子の体験談を話してやるか。 「なぁ桐乃ぉ。 桐乃はブリジットって知ってるべ?」 「うん。あるちゃ―じゃなくて、前にあいつといた時に加奈子と一緒にいた子だよね」 「ブリジットってよー、事務所じゃ加奈子の後輩なんだけどさ、しょっちゅう付きまとってくんのよ。 ホント、マジウザくてイラつくんだけどよぉ。 それでもよ、あいつイッショーケンメーだし、頑張ってっし、カワイイからよ、 ブリジットに頼られたり、甘えられたりするのってキライじゃねーんだよな」 ミョーに気恥ずかしくなり、顔をそらす。 「なんていうかさ、加奈子妹いないからよくわかんねーけどさ、妹ができたみたいっつーの? 世話焼くのは悪い気分じゃねーっつーか・・・」 「加奈子・・・ 少し心配してたけど、ちゃんと頑張ってるんだね」 あやせが加奈子を優しく見つめる。 「うっせ!」 もう一度顔をそらす。 まったく、顔があちーじゃねーかよ。 やっぱ、言うんじゃなかったな。 「あるちゃんが妹・・・じゅるり」 加奈子が視線を戻すと桐乃が壊れていた。 最近桐乃のこんな顔をよく見るんだけどよ、どっか違う場所でも見た気がするんだよな。 どこだっけ? 「ってかよ、桐乃だって頼られるのは嫌いじゃないべ?」 「あたし?あたしは・・・」 加奈子はちらりとあやせに視線を向け、 「たとえばよ、あやせに頼られたり甘えられたりすると嬉しいんじゃねーの?」 「あやせに? うん。好きな人とか、大切な人に頼られるのは嬉しいな。 信頼されてるんだって思えるし、力になってあげたいし」 「桐乃・・・」 あやせが頬を染める。 桐乃ってばよ、こういう時すっげー素直にしゃべるよな。 意識してるわけじゃなくて、天然のタラシなんだよなー。 大切な人にもよ、そんだけ素直になってやれっつーの。 「そいつもよ、結構なオセッカイやきみてーだからさ、 頼られるとなんだかんだで喜んでると思うぜ?」 「でもあいつ、あたしが何頼んでも嫌そうにするんだよね。 せっかくあたしがかまってあげるっていうのにさ。 あいつ単純だから、嬉しいなら嬉しそうな顔すると思うんだけど」 「それってよ、変なリユーつけてるからじゃねーの? 『あんたしかいないから仕方なく~』とか『責任とって~』とかヨ。 自分じゃなくてもいーんじゃねーかって思ったらさ、素直に喜べねーって」 桐乃いっつも『仕方ないからあいつをつれていったわけ』とか、『そんなことするからお詫びに~させた』とか言ってっけどよ、 加奈子たちにテレかくししてるとかじゃなくて、ホントにそう言ってんだべ。 「確かに素直に誘えたことはない、かな?」 「桐乃はよ、色々なことができるからさ、誰かに頼ることなんかめったにねーじゃん? なら頼ってばっかのそいつって、桐乃にとって特別なヤツなんだろ? それならよ、ちゃんと『特別なんだ、信頼してるんだ、だから甘えたいんだ』ってわかってもらわないといけないぜ? 桐乃にとっての特別だって知って、嬉しくないヤツなんかいねーからよ」 「本当に、喜んでくれるかな?」 間違いないよ。 桐乃に相談されて、加奈子も嬉しいんだからさ。 「うん、分かった。 できるか分からないけど、素直に甘えてみる。 あ、えと、加奈子・・・」 「なによ?」 「ありがとうね。相談に乗ってくれて。 それとね、あいつだけじゃなくて、加奈子もあやせも、あたしにとって特別だから・・・」 桐乃が頬を染めてにっこりと笑う。 だからよぉ、加奈子をオトそうとすんなっつーの! 「桐乃ってさぁ、時々『あるちゃん』とか『めるちゃん』とか言ってっけどよぉ、メルルのこと知ってんの?」 「え?えと、あの、その・・・」 おぉ、桐乃がきょどってる。 まぁ恥ずかしいのはわかるけどよ、なんたって 「わかってるって。 加奈子の仕事について調べてくれたんだべ? 桐乃が子供向けアニメなんか見ねぇのわかってからよ、勘違いしねぇって」 「!そうなの! 加奈子の仕事の内容が知りたくてさ、ちょっと見てみたんだ」 やっぱなー。 桐乃のヤツ、最近加奈子の仕事についてよく聞いてくるし、 思い込みの激しいあやせと違ってちゃんと下調べすっからよ、そうだと思ったんだ。 「BDも第一期第二期両方とも初回特典付きで集めたし、もちろん劇場版も初日に見に行ったよ。 第三期だって毎週録画しながら見てるし、BDは全巻予約済み。 あ、予約特典は全部欲しいから―」 桐乃が目をグルグルさせながらすごい勢いで喋りだす。 ・・・・・・下調べだよな? 「桐乃!」 あやせがあわてて桐乃の名前を呼ぶと、桐乃の動きがぴたりと止まった。 桐乃の顔色が真っ青に変わっていく。 あと、加奈子を見るあやせから表情が消えていく。 大声で喋って恥ずかしい姿を見られたからって、そこまで慌てなくてもよくね? 「ねぇ加奈子」 『黙っててくれるよね? 私、まだ加奈子とサヨナラしたくないんだ』 あれ?今あやせの声が二重音声で聞こえなかった? 加奈子の危機察知能力がスキルアップしたんかな? とにかく、今のはスルーしろってことだよな。 「ちゃんと調べてくれてるのは嬉しいけどよ、ワザワザ買わなくてもいいっつーの。 事務所から渡されたのがあっから、言ってくれたら貸してやんよ」 加奈子のせいで桐乃がオタになんのも困るからよ。 「あ、うん。それもそうだね。 でもさ、ちゃんと見るからには製作者に何か返さないといけないじゃん?」 ふ~ん。作家様からしたらそういう考えなのかもな。 まぁとにかくメルルのこと嫌いじゃねーみたいならさ― 「それで加奈子ぉ、今度遊園地でメルルショーやるんだけどぉ、 よかったら『大切なヤツ』と一緒に見に来ねぇ? いい席取っておいてやっからヨ」 「え?」 「それならそいつをデートに誘う口実ができるっしょ? あ、誘うときは素直に『一緒に行きたい』って言えヨ? さすがにそこまで面倒見きれねーかんな」 「あたしが、京介と一緒に、加奈子に招待されて、メルルイベントでデート・・・」 桐乃の顔がだらしなく溶ける。 ・・・何考えてんのかわかんねーけどよ、見てて不安になんだけど。 ・・・しかたねーな。 「ちゃんとやれっか心配だから加奈子もついていってやりてーんだけどヨ、 リハとかしねーといけねーし、あんまり桐乃にかまってやれねーんだよな」 ちらりとあやせの方を見る。 「なんならあやせも一緒に来たらどうヨ?」 「え?私も?」 あやせが目を丸くする。 さっき一緒に行きたいって目で合図してたじゃねーかよ。 「あ、それいいかも」 桐乃が賛同する。 「駄目だよ。私が行ったらお邪魔になっちゃうし・・・」 「いいって、いいって。 あいつもあやせのこと気に入ってるしさ」 「でも・・・」 「・・・ねぇ、あやせ」 桐乃が正面からあやせを見る。 「前ならさ、あやせとあいつを会わせたくなんかなかったけどさ、 あいつ、あたしを選んでくれたし、今なら少しくらいあいつを信じてもいいかなって思えるから。 それに、あやせだってあいつに会いたいんでしょ? あいつのことは大事だけど、あたしにとってあやせもすっごい大事だし、 あいつと、あやせと一緒ならもっと楽しめると思うんだ」 あやせの顔が朱に染まる。 「う、うん」 「それにさ、」 桐乃は身を乗り出し、あやせの耳元に顔を寄せる。 なんだよ、加奈子は置いてけぼりかヨ。 「あたしが・・・暴走・・・心配だし・・・ だけじゃ・・・」 「うん、確かにね」 「・・・兄貴が・・・の時も・・・していいから」 「あはは、それなら私が必要だね!」 ・・・加奈子、無視されて寂しいんだけど・・・ 「それで、結局来るのかヨ?」 しばらくして桐乃が離れたのを見計らって、そう切り出した。 「うん。加奈子のイベントには絶対に行く。 そのせいであやせやあいつが来ないって言っても、絶対に行くからね!」 来てくれるのは嬉しいけどよ、それってホンマツテントーじゃね? それにしても今の桐乃の顔、はじめてみるくらい楽しそうだな。 「加奈子、これで何度目になるかわかんないけどさ、 色々とありがとうね。 本当に嬉しい」 「・・・加奈子と桐乃はダチだべ? ならよぉ、桐乃のために頑張るのは当たり前じゃん? いちいち礼なんか言わねーでいいっつーの。 代わりにちゃんと、その鈍感な『大切なヤツ』に言ってやれよな」 桐乃と話すのは楽しいんだけどよ、 「加奈子は優しいね。 うん、ちゃんと言ってみる」 そんな顔されると、こっちの調子も狂っちまうじゃねーかヨ。 「ところであやせぇ、いつになったら糞マネ連れてくんの?」 この間あやせにつれてきてくれって頼んだんだけどよ、 糞マネは受験生のアルバイト君だったらしくて、時間が取れないって言うんだよな。 時間が合えば連れて来るって言ってたけどよー、もうずいぶんと経つぜ? やっぱりあの糞マネ、あやせに埋められちまったんかな・・・ え?加奈子の方こそ、この間あやせのゲキリンに触れて埋められたんじゃなかったかって? ・・・・・・よく思い出せねーや。 よくわかんねーけど体も震えるし、思いださねーほうが良い気がすんだよな。 「え、えっとー」 あやせが加奈子から目をそらし、桐乃のほうを見る。 桐乃がコクリとうなずく。 ?桐乃も糞マネのこと知ってんの? 「桐乃が良いなら・・・ 加奈子、その人なら今度のイベントのときに会えるかもしれないよ」 「今度ってーと、桐乃とあやせが見に来るときかヨ。 ひひ。そりゃ楽しみだなー」 桐乃の前でショーをやるのは緊張するかも知れねーけど、あの糞マネがいてくれるなら、 きっと加奈子は最高のパフォーマンスを見せてやれるだろうなぁ。 桐乃、ちゃんと楽しんでくれると嬉しいな。 「でも加奈子、あの人は筋金入りのシスコンだよ? ・・・妹に頼まれたからって彼女を作らないくらい」 ふ~ん。 桐乃のお兄さんみたいなヤツって結構いるんだな。 それに、糞マネの妹も桐乃みてーにブラコンなんかよ。 まぁでも、問題ないべ。 糞マネがすごいシスコンだとしてもよ、 「平気だっつーの。 要はぁ、加奈子がその糞マネの妹よりも魅力的だって認めさせてやればいいんだべ? なら、あいつを加奈子しか見えないくらいにメロメロにしてやんよ♪」 -HAPPY END?- おまけ 「ところでよ、ランちんなんだけどよぉ、この間誰かに助けられて、そいつのこと探してんだってヨ」 「ふ~ん。その恩人てどんな人なの?」 「なんて言ってたっけなぁ。 そうだ! 確かよぉ、目は死んだ魚みたいだしぃ、地味な雰囲気だけどぉ、 よく見ると顔は整っててぇ、優しくてぇ、頼りになるヤツだとか・・・」 -------------
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279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/06/06(月) 21 25 37.52 ID E8IFGM4p0 「おい 桐乃」 「ん?」 「今日大学来たときのあれ なんだ」 「は?何のこと?」 「正門前にいたろお前 一緒に居たの誰だ」 「あー あーあれね」 「お前が話してたの あれ誰だ」 「あの人ね あー あー 知らない人」 「知らない人?」 「そ 初対面のひと」 「なんでお前はうちの大学で はじめて会う男と話してるんだ」 「なに?いきなり絡んできてその態度って?ウザいんですけど」 「俺は真剣なだけだ」 「だからー ただのナンパだって 声掛けられたの」 「そうなのか」 「そうなの まあ適当にあしらっておいたけどね」 「お前はいつもあんななのか?」 「はあ?」 「あんな楽しそうにナンパしてくる男の相手するのか?」 「楽しくなんか…別にね 塩対応してもいいけど可哀想じゃん?」 「可哀想?」 「そ 勇気出して声掛けてきてんだよ きっと ちょっとだけでも話してあげてもいいじゃん」 「本当か?」 「あーもー!アンタしつこい!ウザい!なんなの?!関係無いじゃん!!」 「…関係ないってどういうことだ」 「アタシに用がある人間にアタシがどんな風にしようと勝手でしょ!何か問題ある!?」 「…」 「そもそもナンパなんて日常だし 街歩いてたらされて当たり前だし 対応とか慣れてるし」 「…」 「まあアタシくらいの美少女だもん 男どもが放っておくわけないよねー?」 「…」 「なに?その顔?あ ひょっとして嫉妬してる?えー なにそれー キモーイ」 「…」 「"俺の女に手を出すな!"ってヤツ?うわー」 「…桐乃」 「そういうのウザいから やめてよね」 「…」 「心配してるのかもしれないけど おせっかいだから」 「桐乃」 「なに?あんなの アタシ一人でも大丈夫だから」 「桐乃」 「だから放っておいて!」 「桐乃」 「ああもう!!あっち行って!!」 「桐乃!!!!!」 「ひぅっ!?」 「…」 「…」 「あ…いや」 「な…に…そんな…」 「…」 「さ サイテー…女の子…怖がらせるとか…」 「…スマン 悪かった 感情的になっちまって」 「…出てってよ…」 「出て行かない まだ話は終わってない」 「これ以上なに…」 「お前が本当のことを言うまで俺は動かない」 「…」 「あのあとお前と会ったとき 明らかに様子おかしかったよな?」 「そんなこと…」 「あの男のせいか?」 「…」 「そうなんだな?」 「ちが…」 「…」 「…」 「桐乃」 「…うん」 「…そうか」 「…」 「聞かせてくれるか?」 「…あのね」 「…」 「…ナンパされるの 慣れてるってホントなんだ」 「ああ」 「でも…そういう時って友達がいるから なんとかなるんだけど」 「…」 「ひとりの時は 怖いの」 「…」 「みんなと一緒のときみたく 適当にあしらったり無視したり したいんだけど」 「…」 「怒らせちゃって なにか なにかされたらって思うと」 「…」 「笑って 話なんかして そうすれば大丈夫かなって」 「そうか…」 「凄く 怖くて だから 無理やり笑って」 「桐乃…わかった 言ってくれてうれしいよ その…怖かったんだな」 「…うん」 「なんか 悪い 嫌な気分にさせちまってすまない」 「ううん」 「いや さっき話しかけたときイライラしてた 強い語調になってスマン」 「…ちょっとこわかった」 「ほんっと!ゴメン!」 「やっぱ嫉妬してたんだ…」 「や まあ 嫉妬 ん…正直なところ あのとき男と二人でいたって時点でイラっとした」 「そっか 嫉妬か ふーん んふふ」 「なんで嬉しそうなんだよ」 「なんでもなーい」 「…なあ桐乃」 「わぁっ?!」 「どうだ?」 「ななな…いきなり抱きついてきて何…」 「優しくしてるつもりだけど…痛くないか?」 「…ちょっと痛い」 「こんなに細いもんな お前今日さ ナンパされたとき一人でなんとかしようって思ったんじゃないか?」 「…そりゃ アタシのことだし」 「お前は抱きしめられるだけでも簡単に傷つけてしまうくらい繊細なんだ そんなか弱い存在なんだ」 「ん…」 「弱さを見せないのは 桐乃 お前の良いところだ でも弱さを認める強さってのもある」 「認める…」 「自分ではどうしようもないこと 何もできないこと あるだろ?」 「うん」 「お前の悪いところだ 何でも自分でやろうとして 全部抱え込んでクラッシュしちまう ずっと前から ずっとそうだ」 「…」 「痛いなら痛いって 怖いって言ってくれよ」 「うん わかった…」 「いつでもお前のとこに行ってやる」 「ほんと?」 「ああ お前がピンチのとき俺が居なかったことあるか?」 「…ない」 「安心しろ なにかあったときはこの体温を思い出してくれ 俺はいつもお前のそばにいる」 「…スタンド…?」 「4部のアニメは良い出来だよな…って いい雰囲気が台無しだよ…」 「いいの アタシ達にそういうの似合わないの そう思わない?」 「まあ かもな」 「くすっ ふふ」 「はは」 「さて じゃあ行きますか」 「え?」 「ナンパ野郎に嫌な思いさせられたのよ 忘れるために何か美味しいものでも食べに行こうよ」 「え…今月キツいんだけど…」 「…なんか言った?」 「そんな目で見るなよ怖いよ」 「こないだ沙織に教えてもらった中華のお店があるんだ!行ってみよ!!」 「待て待てまて!沙織!?あいつがオススメする店の料理って幾らすんの?!」 「いいじゃんいいじゃん アンタこないだカード作ったんでしょ?それで」 「やめろその発想!カードは魔法のアイテムじゃないんだぞ!」 「ほらほら 食べログの評価高いし美味しそう!」 「うわっ!予算高!!たっか!!無理無理!」 結局大学近くにあるちょっと高いけど旨いって食堂で食べた。 桐乃はぶちぶち文句いってたけどそれなりに満足だったみたい。 ----------
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374 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/23(金) 21 00 09.40 ID oZ3DXYes0 [2/2] きりりん饅頭か~ ※若干エロ描写あり 「なぁ、桐乃 『桐乃まんじゅう』っていうのを耳にしたんだが、コレってなんだ?」 「え!?えっと・・・ね、京介は食べてみたいの?」 「あぁ、どんなまんじゅうかはよくわからんが、『桐乃』って言葉が入ってるから 気になってな」 「し、し、シスコン!そんなにあたしのこと気になるんだw」 「うっせ!シスコンだよわりぃか!いっつも桐乃のことばっかり考えちまうんだよ!」 「ちょ!!あ、あ、あんた・・・!」 「で?桐乃まんじゅう、食べさせてくれよ」 「・・・わかった」プチプチ と言いながら制服のボタンを外す桐乃 「え!?ちょ!き、き、桐乃!?なにしてんだ!?」 「は?あんたが食べたいっていったんでしょ!」 「いや、そうだとしても、なんでお前が脱ぐんだ!?」 「あんたほんとバカね 『桐乃まんじゅう』っていったら・・お、おっぱい のことしかないじゃない!!もうっ!言わせんな!!」 「わ、わかった!わかったからちょっと待て!」 「はぁ?今更なにいってんの?ほんっといくじなし・・!」 「ちげぇーよ!このっ!!」 「きゃっ!」 「・・・京介、『桐乃まんじゅう』食べていいよ?」 「あ、あ、あぁ・・」 「食べられるの初めてだから、優しくしてね?」 いや、A.Aさん、「おっぱい」っておっぱい饅頭のことだから! いやだなぁ、何勘違いしてるんすか~ ハハハ -------------
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430 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/06/15(水) 01 43 45.66 ID THt4kK020 423 ルートB ちょっと切ないお話。 かなかなマジ男前。 そんな続きです。 【SS】恋多き乙女・桐乃【ルートB】 「桐乃ってばよぉ、今の三人の中でさぁ、ダレが一番好きなんよ?」 「はぁ!?」 「話を聞ぃてっとよぉ~、桐乃どいつもこいつも好きみてぇじゃん? ならよぉ、そん中でダレがどれだけ好きなんよ? それともぉ~三人ともアソビなワケぇ?」 やっぱりさ、ユウセンジュンイって大事だって思うわけよ。 自分の中で一番を決めておかないと、結局みんな傷つくことだってあるしさ。 加奈子、そんなの好きじゃねーし。 「え、えっと・・・・・・三人の中から選べって、そんなことできるわけないじゃん・・・・・・」 桐乃のことだからお兄さんが一番かと思ったけどよ、別にそういうわけじゃねーんだな。 「もしかしてぇミツマタってやつぅ? 加奈子ぉ桐乃の書いた小説読んだけどぉ桐乃はいろんなヤツと恋愛したいわけぇ?」 桐乃の書いた小説は読んだけどよ、あんまり加奈子の好みじゃなかったんだよね。 話の中でリノは結構いろんなヤツにカラダ許してるしさ。 リノが相手のことが大好きなのもわかるし? そういう恋愛があるのもわかるんだけどよ、 加奈子としては最初から最後まで、一人のことが大好きな話が好きなんだよね。 「あ、あれはただの創作だもん。 それにモデルだって一人のヤツだしさ」 「あ~!やっぱ一番に好きなヤツいんじゃんよぉ~。 話からするとぉ、ピアスのヤツ?」 桐乃が小説書いてたのってクリスマスくらいだったよな。 話の中にもピアス買ってくれたヤツがいたし、そいつがモデルじゃね? 「それ、私も気になるな。 桐乃、その人のことどれくらい好きなの?」 あやせが笑いながら桐乃につめよる。 「え、えっとぉ~」 あやせが怖い顔してっけどよ、そのおかげで怯えた桐乃からホンネが聞けそうじゃん。 「そ、そんなの、言えるわけないジャン・・・・・・ あたしにとってあいつがどれだけ大切かなんてわかんないし・・・・・・」 「ふ~ん。別に大切なんかじゃないって言わねぇ~んだぁ?」 桐乃の顔が赤く染まる。 ・・・・・・あれ?桐乃の今の返事、ちょっと違くね? A.『好きか』って質問に『大切』って答えたよな? ⇒B.まぁ、いいか。それよりも告白とかしねぇの? まぁ、いいか。それよりもぉ~ 「じゃあよぉ、告ったりはしねぇの~?」 加奈子ほどじゃないけどさ、桐乃って結構モテるんだよね。 告れば間違いなく落ちると思うんだけどよ。 「そ、そんなことできるワケないじゃん! だってあいつ今さ、 ・・・・・・彼女いるから」 「あ・・・・・・」 桐乃とあやせの表情が沈み込む。 ふ~ん。どいつだかわかんねーけどよ、そいつ彼女いるんだ。 聞いた感じどいつもぱっとしねーヤツみてーだけどさ、桐乃とあやせが入れ込んでるみてーだしよ、 目立たないだけで結構すごいやつだと思うんだよね。 もしかしたら結構もててたのかもしんねーな。 桐乃もあやせもしょげてしまい、誰も喋ろうとしない。 特に、桐乃は今にも泣きそうだった。 なんだよ、シケたツラしやがってよ。 加奈子にそんな顔みせんなっつーの。 「・・・・・・じゃあよ、桐乃はあきらめんのかよ」 桐乃の肩がピクリと揺れる。 「しかたないじゃん。絶対に無理なんだし・・・・・・」 桐乃と会ってから大分経つけどよ、桐乃があきらめる姿ははじめて見る気がする。 確かに桐乃はスゲーやつだけどよ、できねーこともあるんだよな。 まぁ加奈子も桐乃もただの中学生だし?あきらめなきゃなんねーこともいっぱいあるんだろうけどヨ。 それでも加奈子はさ、桐乃のそんな姿、見たくないんだよね。 「・・・・・・加奈子はさぁ、ベタな恋愛物が好きなんだ」 桐乃が顔を上げて加奈子を見る。 「いるわけないような最高なカップルがいてさ、ありえない展開が起こんの。 男も女ももすっごい良いヤツで、お互い超好き合ってて、それで最後までずっと一緒なの。 最後は二人が結ばれてさ、最っ高に幸せになんの」 桐乃はすっげぇいいヤツで、たぶん桐乃が好きなヤツもすっげぇいいヤツなんだよね。 でもさ、やっぱり恋にショウガイは付き物なわけよ。 「そんなの作り物の嘘っぱちだし、ゲンジツだと無理ってわかってるけどさ。 でもさ、それでもそんな恋愛がしたいってんならさぁ」 加奈子たちも、たぶんそいつもガキだからさ、何でもうまくいくってハズないんだよね。 そんなことは知ってるよ。 たとえば、もし桐乃が一番好きなヤツが桐乃のお兄さんだとしたらよ、ゼッテー叶うハズないじゃん? けど、やっぱり加奈子たちガキだからさ、納得できないわけよ。 それならさ、 「全力でぶつかっていくしかねーじゃん」 それしか、ないんだよ。 「そりゃドラマや映画みたいにはいかねーけどよ、でもあきらめられねーならそーするしかないっしょ?」 そんで加奈子はさ、桐乃にはずっと前を見ていて欲しいんだよね。 だって桐乃は、加奈子の『大切なダチ』だからさ。 「でもさ、全力でやっても、どれだけ自分を追い込んでも、できないこともさ、あるんだよ」 桐乃はアメリカまで留学に行って、来年まで帰ってこないハズだった。 詳しい話は聞かなかったけどよ、桐乃を見てるとさ、ダメだったってのがわかっちまうんだよね。 見せようとしねーけど、桐乃が落ち込んでたことが分かるからさ、連絡してこなかったことはあんま触れてやんなかったんだよな。 そんで、もう会えねーんじゃねーかって思ってた桐乃をよ、こっちに引っ張ってきたヤツって、 「けどよ、よく知らねーけどさ、桐乃のお兄さんはそんなのにも立ち向かっていったんだろ?」 桐乃ってばよ、ガンコだからさ、加奈子とかあやせじゃ絶対に連れ戻せなかったんだよね。 桐乃のお兄さんもさ、桐乃にとって特別だってだけじゃ絶対に無理だったと思うわけよ。 それでも桐乃を説得できたってのは、 「あたしも桐乃のお兄さんみたいにばかだからわかんだけどさ、たぶん桐乃のお兄さんはさぁ、桐乃のためにがんばったんじゃないんだよね。 なんていうかさ、自分のため?そんな気がすんだよな」 帰ってきた桐乃は落ち込んでたけどさ、なんか吹っ切れてた。 未練がないわけはずないんだけどよ、それ以上の何かがあったんじゃねーの? 「桐乃が落ち込んでんのがイヤでさ、桐乃のことを考えずにガムシャラにやったんじゃねーの? じゃなきゃ誰かのためにそこまでやれねーって」 桐乃のお兄さんてさ、桐乃のことがすっげー大事なんだよね。 加奈子ほとんど聞き流してるけどよ、桐乃の顔を見れば大事にされてるのまるわかりだっつーの。 だから自分のこと以上に頑張れるんだよ。 なぁ桐乃、ちゃんとわかってやってんのかヨ? 「結局さ、ゼッタイに譲れないならさぁ、相手の気持ちを無視してでもホンネをぶつけるしかねーじゃん。 桐乃のお兄さんみたいにさ、全力で真っ直ぐ立ち向かっていって、ショージキなキモチを伝えて、自分の望みを押し通すの。 桐乃はそうやって助けられてきたんじゃねーの?」 自分の気持ちに正直に行動できるって、桐乃のお兄さん結構スゴくね? ほとんど話してねーからわかんねーけどさぁ、加奈子と相性良さそうだよね。 桐乃、いいお兄さんがいてうらやましいなぁ。 「―うん、そうだね。 でもあたし、どうやればいいかわかんないしさ」 「桐乃はずっとそばでお兄さんを見てきたんだろ? ならよぉ、お兄さんならこうするんじゃないかって考えて動けばいーんじゃね?」 「兄貴みたいに?」 桐乃が顔をあげる。 「それでもダメならよー、それこそお兄さんに頼ってもいいしさ? 言ってくれればよーあやせだって力になるだろうし? なんならさ、加奈子も助けてやっからヨ」 「加奈子・・・・・・」 桐乃が真っ直ぐこちらを見つめる。 「まっ、そういうことだからヨ」 そんな見つめてくんなよ、恥ずかしい。 「・・・・・・ありがとうね、加奈子」 加奈子も見とれるような笑顔で桐乃が笑う。 やっぱ、桐乃には笑ってんのが一番だよな。 「うん、決めた」 しばらくして加奈子が追加注文したバナナパフェが届くころ、桐乃はそう言った。 「告白はしない」 「・・・・・・いいのかヨ?」 「うん。あいつの彼女はさ、あいつにはもったいないくらいいい子だし、あいつもその子のこと、その、好き、みたいだからさ、 無理やり別れさせることなんてできないし」 「まぁいいけどヨ」 結局あきらめんのかよ。桐乃らしくねーな。 隣であやせもしょげてるぜ? 「でもね」 桐乃はにぃっと笑う。 「絶対にあきらめない。 これからもアピールしてくし、もしあいつが悲しそうにしたら絶対に別れさせる」 桐乃は吹っ切れたような顔で、少し楽しそうに言った。 そうそう。 これが、加奈子の知っている高坂桐乃なんだよね。 「ひひ、だってよぉ、あやせぇ。 うかうかしてるとぉ~取られちまうぜぇ?」 「私は別にお兄さんのことなんかどうとも思ってないから!」 あやせは顔を赤くして手をぶんぶんと振る。 「ふ~ん。あやせの本命はぁ、桐乃のお兄さんなんだぁ」 ひひ、いい話聞いちまったぁっと。 「加・奈・子?」 「なによ」 「あとで、少しお話しようか」 あやせが笑顔で言う。 「ひぃ!」 マジ怖ぇんだけど! あやせさん、それぜってぇお話で終わらないよなぁ! 「っと言いたいとこだけど、今日は許してあげるね」 え?許してくれるワケ? 加奈子、初めてこのデカブスが天使に見えたんですけど! 「でもその代わり、加奈子の好きな人教えてくれないかな?」 あやせがにこりと笑う。 「あ~あたしも知りた~い! 加奈子、時々ケータイをじっと見てるときあるよね。 あれ誰の写メ見てんの~?」 げぇっ!桐乃も食いついてきやがった。 ってか、気づいてたのかよ。 まぁ別に好きなわけじゃねぇし?言ってもかまわないんだよね。 それに、あやせには言いたいことがあったしよ。 「いいけどよぉ、その代わりぃ、加奈子のお願い一つ聞いてくれないかなぁ?」 「う~ん。変なお願いじゃなければいいよ?」 さぁて、加奈子も頑張ろうかなぁ。 「じゃあよぉ、もう一度糞マネに会わせてくんねぇ?」 -GOOD END- -------------
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【SS】俺と桐乃とコーヒーとおにぎりと 「んん~~! ふう。お、もうこんな時間か」 センター試験も程近くなってきた秋の終わりの夜のこと。 今日も今日とて勉強に明け暮れていた俺である。 夕飯を食べてから一息ついた後、受験生として机へと向かった俺だが、今日は随分集中できたら しい。もうじき日付が変わろうとしている時間になっていた。 「どうりで体が硬いわけだな。背中や首がゴキゴキいいやがるぜ」 ストレッチよろしく首を回したり背筋(せすじ)を伸ばす。 ついでに肩をぐるぐる回したりと一通り体をほぐしたところできゅるると腹が鳴った。 「・・・・・・コーヒーでも飲むか」 腹いっぱいになると眠くなるからと、少し少なめにした夕飯のツケが回ってきちまったようだ。 空きっ腹にコーヒーってのはあんまり良くないんだろうが、夜食なんて気の利いたもんはないしな。 勉強の進み具合は十分だし別に切り上げてもいいんだが、いい感じに集中できたし、誰かさんを 見習ってもうひと頑張りしようかね。 チラリと壁の向こうに視線を向けたその直後、コンコンというノックとほぼ同時にドアが開き、ひょっ こりと顔を覗かせる人物が。 見慣れた茶髪の丸い顔。愛らしい唇に整った顔立ち。深夜ということもあり、ほぼすっぴんだという のにその可愛さは以前保ったまま(むしろ個人的にはこっちのほうが可愛いんじゃないかと思うんだ が)の桐乃である。 「なんだ、起きてたんだ。起きてるなら返事ぐらいしてよ」 俺が起きているとわかると、桐乃はそのまま体を部屋へと滑り込ませそうのたまった。 返事も聞かずにドアを開けたのはお前だろうに。もし俺がマッパだったり、その格好でエロゲとかし たらどうするんだ。やらねえけど。 「んだよ、起きてちゃ悪いのか」 「勉強してたの?」 こっちの言うことは無視かよ。 しかしこんな些細なことに突っこんでも仕方がない。 世の中仕方ないで済ませていいことなんかないとはいえ、諦めが肝心という言葉もある。 桐乃と付き合っていくうえでは、後者が圧倒的に優先されるのである。 「・・・そうだよ。丁度キリがいいからな。ちょっとなんか飲もうと思ったところだ」 「ふ~ん・・・・・・コーヒー、飲む?」 「あん?」 「あ、たしも・・・・・・丁度そんな気分だったしさ。――あんたも飲むならついでにって。洗い物、何度も 出すの面倒でしょ」 まさかのお誘いである。 とはいえ、こちらとしてもそのお誘いはありがたい。 しかし桐乃の淹れたコーヒー、ね・・・。 「んじゃ、お言葉に甘えるか」 「じゃあ早くいこ。あんまりのんびりしてると体が冷えちゃうし。・・・・・・ふぁあ」 桐乃が俺の手を引いて部屋を出ようとしたその時、その口からあくびが漏れる。 よくよく桐乃の顔を見てみれば、目がどことなく眠そうに見えなくもない。 「お前本当は眠いんじゃねえの? コーヒーなんて飲んで眠れなくなってもしらねえぞ」 「そんなのあたしの勝手でしょ」 ふん、と鼻をならせて、そんなの知ったこっちゃないとズンズン階段を下りていく桐乃。 手を引かれてる俺もそれについて行くほかない。 リビングへ行く途中、何度もあくびをかみ殺してたようだが、こいつ本当に大丈夫か? 「じゃあコーヒーよろしく」 「って俺が淹れるのかよ!?」 てっきり桐乃が淹れてくれると思ってた期待を返せ! どれだけ不味かろうと全部飲み干す覚悟をしてたってのに、全部無駄になっちまったじゃねえか! 「なによ?」 「・・・ちょっと待ってろ。すぐ淹れる」 「早くしてよね」 「へいへい」 ソファにすわって太ももに手を挟みもぞもぞしながら桐乃が言う。 あんまり待たすのも悪いな。ちゃっちゃと淹れるか。 キッチンに入ると電源の入ったままのポットを手に取る。 最近は俺がコーヒーを夜に良く飲むのを知っているのか、お袋はコレだけは用意しておいてくれ る。それならついでに夜食も用意してくれりゃいいのに。 なんてことを思ってても始まらないか。桐乃から文句が飛んでくる前に用意しちまわないとな。 コーヒーの粉を探して視線をめぐらすとあるものが目に入った。 これ、もしかして・・・・・・ 「桐乃、コーヒーできた・・・ぞ?」 自分と桐乃、二人分のコーヒーを入れて戻った俺が見たのはソファに横になり、静かに寝息をた てる桐乃の姿だった。 「はぁ、ったく。だからしらねえぞっていったのによ」 どうやら待ちきれずに寝てしまったらしい。 あの数分で眠っちまうとは、一体どれだけ眠いのを我慢してのやら。バカなやつだ。 「・・・こうして寝てれば、素直に可愛いって思えるんだけどな」 普段も憎まれ口さえなければ、と思うがそれが桐乃というのも確かだ。 いきなりしおらしくなられても気味が悪いことこの上ないだろうな。 でも、もう少し素直になってくれてもいいと思うんだよな。 コーヒーを探して見つけた、キッチンに置かれた少し歪な形をしたおにぎり。 それが誰によって作られたかなんて、考えるまでもない。 「そのまま渡してくれりゃ、お礼も言えるってのによ」 お前が寝てたら、言っても聞こえねえじゃねえか。ま、それでも・・・・・・ 「ありがとうな、桐乃」 さらさらとした髪に包まれた頭を撫でる。いくら指を通しても絡まらない髪が手に気持ちいい。 そうしていると、桐乃が寒そうに体をよじらせる。 「っと、このままじゃまずいか。桐乃が風邪引いちまうな。つっても、どうしたもんか・・・」 数瞬考えて、すぐに結論をだす。 「よいせっ、と」 桐乃の背中と膝の裏に手を回して持ち上げた。所謂お姫様抱っこである。 しかしこいつ軽いな。本当にちゃんと食ってんだろうか。モデルってのはこうもみんな軽いものなん だろうか。 桐乃を起こさないように慎重に階段を上る。幸いドアはしっかりと閉まってなかったのか、半開きの ままだったので、それを足で開けることで事なきをえた。 部屋まで運んだ桐乃をベッドに寝かせ、布団をしっかりかぶせてやる。 「おやすみ、桐乃」 最後に頭をもうひと撫でだけして、部屋を後にする。 がんばれ、という声が聞こえた気がしたのは、多分気のせいだろう。 「さて、と」 コーヒーとおにぎりを持って自分の部屋へと戻った俺は、「いただきます」と早速おにぎりにかぶりつく。 「・・・・・・しょっぱい」 どうやら塩の配分を間違えたらしい。妙に塩見の強いおにぎりだったが、それでも腹はしっかり膨 れた。ついでになにやら胸の辺りも一杯だ。やる気も漲ってくる。コレなら大丈夫だろう。 「さて、もうひと頑張りしますかね」 このおにぎりを作ってくれたあいつのためにもな。 おにぎりの乗っていた皿を机の隅に寄せ、コーヒーをお供にして俺は再び参考書へと向かっていった。 翌日、夜食の件に関してお礼を言うと 「あっそ」 と、そっけなく顔を逸らされてしまったが、そのかすかに見える耳が真っ赤に染まっているのを俺は見逃さなかった。 その後、日を追うごとに夜食がだんだん(主に味の面で)グレードアップしてくことになり、俺がその 夜食を楽しみにするようになるのは余談である。 ―おわりー ----------
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379 名前:【SS】if 桐乃の同級生京介 告白式前編[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 00 02 14.03 ID p77uQwKHO [1/5] ※※※ ひょんなことから俺、高坂京介が中学三年生として暮らすようになってはや幾月、 もう学年末、明日には卒業を迎えることになった。 「一年間、あっという間だったなあ」 「高坂君の周辺は毎日が大騒動の連続だったからねえ」 「ほんと、ランには世話になったよ」 「なに改まっちゃってんの」 この子はラン。桐乃の親友の一人であり、俺の素性を知る人物の一人でもある。 俺が桐乃のクラスに転入した当初、なかなか馴染めなかったときから いろいろフォローしてくれたクラスメートだ。 てか、本来なら桐乃やあやせ、加奈子がもっとフォローしてくれていいのに あいつらはむしろ率先して俺を騒ぎの中心に引っ張り出してた気がする。 「ランがいろいろ教えてくれなきゃ、今頃引きこもりだぜ」 「そこまで言ってくれると嬉しいな。じゃあ、これはあたしからの最後のアドバイスになるね」 「ん、なんだ?」 「桜桃学園の最後のイベント、『告白式』が高坂君を待ち構えてるからね♪」 「な、なんだそれは?」 ランの説明になると桜桃学園の伝統で、卒業式の後、 卒業生が校内の桜の大木の下で告白を受け、両想いになれたカップルは生涯添い遂げられる… そんな風習があるらしい。 告白の指名を受けた卒業生は逃げることなく相手の告白を受け、イエスかノーか確実な返事をしなければならないとのこと。 「高坂君は人気者だったからね。きっと長蛇の列だよ」 「それはどうだろうな?」 「まあ、うちの学年の女子は高坂君を取り巻く3人組に圧倒されて諦めた子ばかりみたいだけど、 下級生はそういう状況知らない子もいるからねえ」 「ちょっと待て、3人組って?」 「そりゃ桐乃とあやせと加奈子に決まってるでしょ。何を今更」 「いやいや、後二人はともかく、桐乃は…」 「マジな話、桐乃は高坂君のこと好きだからねえ」 「そんなわけねーよ」 「それはどうかな?高坂君と話してる桐乃は、口調や言葉はキツイけど、 すごく楽しそうなんだよね。まさしくバカップルの痴話喧嘩だし」 「………」 「…高坂君は、確かに桐乃の兄さんだけどさ、もし、もしもよ、 桐乃が真剣な気持ちで告白してきたらきちんと受け止めてあげてよね」 「ラン、俺達兄妹のことを気にかけてくれてありがとな。あとは俺の好きにやらせてくれ」 俺はそう言い残して教室を離れた。 もし、桐乃が告白してきたら、か… 俺は、どうしようか…… 考え出すと、きりがなかった。 ※※※ 翌日、卒業式の一連の行事も終わり、いよいよ「告白式」に俺は向かう。 玄関の手前に、あやせが立っていた。 「お兄さん、これから告白式に向かうんですね」 「おう、あやせ。お前も告白式に来てくれるのか?」 「四月馬鹿にはまだ早過ぎます。 お兄さんはそんなに桜の木に埋められたいんですか?」 「相変わらずラブリーマイエンジェルは言う事為す事がキツイぜ」 「…私には、まだ、お兄さんと生涯添い遂げるだけの覚悟がありませんから…」 「何か言ったか?」 「何でもありません!せいぜいお大事に!」 そう言い残すとあやせは去っていった。 あやせの本心は、今でも読み取るのが難しいんだよな、まったく…… 380 名前:【SS】if 桐乃の同級生京介 告白式後編[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 00 05 16.31 ID p77uQwKHO [2/5] 靴箱の前には、加奈子がいた。 「うへぇ、まったく、モテるマネージャーはつらいヨなあw」 「うっせーよ」 「ま、おめーはこれからもずっと加奈子のマネ決定だからいいんだけどさー」 なんじゃそりゃ? 「まっ、おめーに告白する女達も真剣なんだから、 そこんとこは忘れずに後腐れなくうまくフってやれよ、じゃーな」 「お、おう」 まあ、加奈子らしいと言えばらしい会話だった。 口調はあんなだが、根底には他者への思いやりというか心くばりがあるんだよな、あいつは…… さて、あやせと加奈子がいるなら後は桐乃か、と思ってたんだが、 桐乃は、ここまで姿を見せなかった…… ※※※ ランが教えてくれた桜桃学園の伝統によると、告白する生徒は、その予告として 相手の靴箱に消しゴムを入れる習わしらしい。 何故消しゴムかはランにもわからないそうだが。 俺の靴箱にあった消しゴムは、8個。正直こんなにモテていいんだろうかとの思いはある。 ランが言ったように、俺に告白してくる子は下級生ばかりだった。 確かに可愛い子が多いんだが、俺は一人一人にきちんと断りの話をした。 断られた子は、俺の足元にある、自分が靴箱に入れた消しゴムを引き取って帰る。 俺の足元にはあと一つだけ、消しゴムが残ってる。 その消しゴムのスリーブは、「星くず☆ういっちメルル」のイラストが描かれていた…… ※※※ 「…やっぱり、メルルの消しゴムは、桐乃だったか」 「兄貴、あのね」 「待てよ桐乃!」 「最後まで言わせて! あたしは、兄貴とずっと一緒にいたいの! だからここで告白する!!だってあたし、兄貴が……兄貴のことが、好きだから」 「いいのかよ、俺なんかで」 「バカ兄貴、よくないならわざわざこんな告白するわけないジャン」 「桐乃……大好きだ」 俺は桐乃の肩を抱き寄せ、唇を重ねた。 一瞬、幼い日にこうして桐乃にキスしたのが思い出された。 年月は経ったが、あの時と同じ、純粋に桐乃を好きで好きでたまらない気持ちは、きっと一緒に違いない…… ※※※ 「まさか、兄貴があそこでキスするとは思わなかったんだけど…」 「いや、だってこれが桜桃学園の告白式の伝統なんだろ? 両想いになった印のキスって」 「…そんな話、初めて聞いた…」 待てよ、それじゃあ…… 「よっ、ご両人。さてはめでたく結ばれたね。めでたいめでたい」 「ラン、お前騙したな!」 「ちょっとランちん!兄貴に変な入れ知恵したでしょ!」 「マンネリな告白式に、小さな刺激のエッセンスを加えてみただけだよ」 「小さくなんてないから!」 「まあまあ、二人が結ばれて大団円なんだから 小さな悪戯は水に流してよお」 「まだ終わってないし。あたしたちの戦いはこれからも続くんだからね」 「戦いって、なんだよ!!」 「二人とも、お幸せにー♪♪」 -------------
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226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/06/01(水) 16 49 16.82 ID G8jXU8dO0 桐乃「はーあ ただいまー」 京介「疲れたか?」 「ん でも楽しかった」 「そうか よかった」 「ありがとね 今日は」 「おう ちょっと風呂沸かしてくるから」 「あ いいよ それよかさ 聞きたいことあるんだけど」 「?」 「今日のデート どうしたの?」 「え?」 「んー突然でびっくりしたのはいいんだけどさ」 「でもお前楽しかったって…」 「うん楽しかったよ ちょっと気になったの デートプランについて」 「え…と」 「お洒落スポットにいい雰囲気のカフェ ちょっとお高い食事」 「…」 「細やかな気遣い… 植物園とか言ってたあんたがいきなりこんなエスコートできるなんて驚き!」 「あー…」 「誰?」 「え??あ…いや…」 「だれかなー 最初はさ加奈子が考えたのかなーって でももっとミーハーな感じになるよね あやせかなーとも思ったけどちょっと金銭的にありえないなーって」 「…」 「ほら?どう?」 「沙織さんにお願いしました」 「ふふっ ふーん 納得 やっぱお嬢様は違うなあ」 「あー いや 沙織は悪くないんだ 言い出したのは俺で…」 「そんなんじゃないって 沙織にはアタシからもお礼言っとく」 「…はぁ…アイツに爆笑されるよなあ…せっかく…」 「あはは ばーか 沙織もバレるって分かってたに決まってんじゃん」 「え!?な なんで?!」 「あんたそういう隠し事下手すぎだから」 「…言ってくれよ…」 「簡単に自白しちゃうんだもん 笑うって」 「落ち込む…でも…お前を騙そうとかそういうんじゃなかったんだ」 「わかってるって でもなんで?」 「いや お前と一緒に出かけることは今までもあったけどさ」 「うん」 「その オタク関係のとこが多かったって思って」 「あー そうかな?」 「だから フツーの?って言ったら変だけど オタクじゃないデートしたくて」 「ふーん」 「俺が見たこと無い桐乃を見たくて…」 「…」 「俺 学校でのお前知らないし なんつうか それが変な感じで」 「…」 「クラスでとかモデルの友達とか 一緒のとき どんなのかな?って」 「…」 「俺の知らないとこでどんな風に笑うのか知りたくて」 「…ちょ…」 「もっと 知りたいって お前のこと ……って 桐乃?どうした?突っ伏して」 「…あんたって…ほんと…」 「おい 顔見せろ 耳が赤いぞ 熱か?」 「見せない!!…なんでナチュラルにアタシをこんな…」 「いや 頭から湯気でてるし…」 「うっさい!!あんたのせい!!」 「えええ…」 「…で どうだった?」 「え?」 「今日のアタシ どうだった?アキバのときと違ってた?」 「え?あ …そうだな 違ってたよ」 「違う?」 「うん 違う」 「それってどんな風に?」 「いつもじゃない風に笑って いつもと違う怒った顔で いつもじゃない桐乃だった」 「…なにそれ?わかんない」 「そうだなあ うまく伝えられない でも色んな桐乃が見れた」 「…ばーか」 「そうだよ 馬鹿だよ」 「あんた 今日のデートでアタシのこと分かったつもりになってない?」 「え?」 「まだまだ ぜんっぜんだからね こんなデート一回でアタシを攻略したとか思わないでよ」 「そりゃまた…CG100%コンプはまだまだ先だな」 「ひとをエロゲーのキャラみたいに言うな」 「お前のお陰でそういう思考が染み付いてるんだよ」 「むぅ…!よし!!」 「うお!いきなり起き上がるな!」 「京介 次こそあんたが自分で考えたデートプランでアタシを楽しませなさいよ」 「…ああ」 「ちゃんと採点するから 60点未満は不合格だから」 「まかせとけ 絶対楽しませてやる」 「良し!」 「お前が今みたいなニヤけ顔になるような素敵なプラン考えておくよ」 「な ななな」 「なんか俺の発言がツボだったみたいだな なにが良かったかわからんが」 「ぐぬぬぬぬ」 「ふっふっふっ 今日のデートで桐乃をどう押せばどうなるか わかってきたぜ」 「ぬぬぬぬぬぬ」 「お前単純だから?わっかりやすいやつだぜ っていたっ!痛い!殴るな!」 「このっ!このっ!馬鹿!」 この恋愛ゲームの総プレイ時間は一生。 終わるまで終わらない。 ----------
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273 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/05/29(日) 21 12 02.35 ID hLISNqf80 [2/2] SS高坂桐乃の真相 「桐乃」 とある休日、俺はいつものようにソファーに寝っ転がってる可愛い妹に声をかけた。 あ、えーと、可愛いってのは一般的基準の話な。念のため。 「なによ」 「この間から、ちょっとだけ、気になってる事があってな」 「ふーん?あんた、妹の事が気になって気になってしょうがないんだ~♪ シスコンマジきもーい♪」 「くっ・・・!」 最近は、何言ってもシスコン扱いされちまうよな。 まあ確かに、おれは自他共に認める重度のシスコンだ! 赤城の野郎にだってぜってー勝てる自信もあるしな! ・・・と、それはともかくとしてだ。 今回のミッション。桐乃にこの段階で気が付かれるわけにはいかねー。 「この前、黒猫と対決したとき、黒猫が色々言ってたろ?」 「ス、ストップ!その話は無しっ!」 いきなり何焦ってんだよ。 つーか、いきなり俺の思惑に気がつきやがった? 「いや、それ自体については聞くつもりはないぜ?」 「そ、そうなの?」 「ああ。そうじゃなくって、おまえ、黒猫にかなり色々な事話してるんだよな?」 「い、色々って?」 「黒猫の相談に乗ってやったりしてたろ?」 「あ、それ?うん。あいつずっとぼっちだったじゃん?人付き合いの方法とか、 あたしが色々教えてあげないと、バカやるのが目に見えてるじゃん」 バッサリですね。つーか、俺まで悲しくなってきてしまうぜ? ま、それはそれとして・・・話題に食いつきやがったな? 「ま、たしかにそうだよな。だけど、おまえら初めの頃ケンカばかりしてただろ? そういった話題が出始めたのは最近なのか?」 「うーん。そうでもないかなー。たしかにケンカばかりしてたけどさ。 あたしの大切な友達なのはその頃から変わんないし。 だって、初めてのお茶会でも、アイツ電波飛ばしまくりで見てられないじゃん? こんなぼっち、あたしが見てやらないとどうしようもないじゃん」 あのお茶会では、おまえもハブられてたじゃねーかよ。 と、つい突っ込んでそうだったが、なんとか堪えるのに成功した。 だってよ、俺、こいつがちょっとでも悲しそうな顔すんの見たくねーもん。 「なるほど、それじゃ初めの頃からエロゲーや、陸上、モデルの事とか、 麻奈実の事や、その他のお前の趣味の事も言いまくっていた訳だ。」 「まあね。陸上の事は少し恥ずかしいから、結構後になってからだけど、 モデルのこととか結構話したし、地味子の事とか、趣味の・・・事もね」 地味子言うな。 それにしても・・・やはりか。 「そ、それに、あいつエロ同人とか書いてるじゃん? エロゲーの話題とかしたって、当然でしょ? つっても、あいつはほとんど百合専門だったけどねー」 何ぃ?百合専門だとぉ!? 「あいつは否定すんだけどさー、 あいつの書くエロシーンって絶対女の子しか出てこないのよねー」 「・・・そりゃ、黒猫が単純に男のエロシーンが恥ずかしくて書けないだけだろ?」 「んーそうかな?」 今なら分かる。黒猫はあまりにも男に対する免疫が無いって事がな! 「そうだろ?だったら初めて男向けのエロゲーの話をしたときの事を思い出してみろよ」 「んー・・・・・・ そういや、『破廉恥な!』とか『け、汚らわしいわ!』とか、厨二病全開で騒いでたかなー」 やっぱりな。予想通りすぎるぜ。 つまり、黒猫は自分から『男と女の絡み』とか『男女の性的嗜好』、 あるいは『兄妹の情事』について書けるワケがないってことだ。 ・・・『兄妹の情事』ってのは、あくまで例えだからな? この場に桐乃が居るからってそんな事考えたわけじゃねーし、 そもそも、こいつが好きなのが『妹モノ』のエロゲーってわけで、 俺はあくまでも兄貴としてだな――― 「でさあ、さっきから何なわけー?あんた、まだ黒猫の事ひきずってんの?」 口調はいつも通りのからかうような・・・でも、その心の奥底が表情に表れてしまってる。 たぶん、俺しか気がつかないくらい、ほんの僅かな変化。 「安心しろよ、桐乃。俺は今もおまえの事考えてたし、これから先もおまえの事が一番だよ」 「なっ・・・!何言ってんの!あ、あ、あんたっ!」 そうだよ、その表情。恥ずかしそうで、でも嬉しそうで。 たまにしか見せてくれねーけど、俺が一番好きな女の子の表情だよ。 ああ、みんなに言っておくが、『俺が一番好きな』、『女の子の表情』であって、 桐乃の事が一番好きだとか言ってるわけじゃねー。ちゃんと言ったからな。誤解すんなよ? ・・・って、やばいやばい、肝心な所から離れる所だった。本題に戻ろう。 ここまで傍証を固めてればよ?後は本人を尋問するだけだよな? 「これまでにお前から聞いたことを整理してみたんだが、 やっぱり、でっけー疑問が残っちまうぜ?」 「な、何よ」 「おまえ、パンツ、くんかくんかしてんのか?」 桐乃は一瞬キョトンとした顔を見せて・・・ 瞬時に顔が真っ青になった。 「な、な、な、なに、言って、んのよあんたっ!」 「やっぱ、おまえ、嗅いでたんだな?」 「あ、兄貴のパンツなんて嗅いでないっ!」 「・・・俺は、俺のパンツとは一言も言ってないぜ?」 「あっ・・・」 やっぱり、本当に嗅いでやがったか・・・ そうなんだよな。あのウブな黒猫が、パンツくんかとか考え付くワケねーだろ? 男性向けエロ同人書いてるような・・・あのエロメイドだったらすぐに考え付くだろうけどよ。 ぜってー誰かに聞いたに決まってる。 沙織という線も無いわけじゃなかったが、やっぱ、おまえだったわけだな・・・ 桐乃はいつか見たような怯えたような顔をしてしまっている。 ちょっとやり過ぎちまったか。 でも、これだけはどうしてもちゃんと聞いておきたかったんだよ。 「ごめんな、桐乃」 「えっ、あ、兄貴!?」 「問い詰めるような事してごめんな。」 「う、ううん。あ、あたしが悪かったんだから・・・」 「それは違うぜ?俺は怒ってなんかいないぜ、嬉しいんだよ。 俺の事、そこまで想ってもらってたってのが分かったんだからよ」 「あに・・・京介・・・」 ここで名前呼びかよっ!て、照れるな・・・ 最近分かったんだけどよ、こいつ、嬉しかったりすると、名前呼びになるんだよな。 「だからな、これからも俺のパンツくれーならいくらでも使っていいからな。」 「う、うん!・・・ありがと、京介」 言ったよ!見たかてめーら!俺の妹はこんなに可愛いんだぜ! その上目遣いやっべー!!!はい死んだー俺死んだー! 「そ、それでだな」 「な、なに?」 お互い見詰め合って、顔が真っ赤になっちまう。 き、兄妹なのにこの雰囲気、まずすぎだよな? 「相談が・・・あるんだ」 「う、うん」 そう。この一言を言うために、今日ここまで必死に頑張ってきたんだ。 「代わりに、おまえのパンツ、くれないか?」 え?この後どうなったか? それこそ言うまでもないことだろ? End. -------------
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116 名前:【SS】1/5[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 17 00 03.03 ID BBmXsgBs0 [3/9] 「なに?ぼーっと突っ立ってんじゃないわよっ!」 ビシッ! 「……お、おう」 ……およそ妹とは思えないような横柄な発言を叩きつけ、そのまま自室にこもってしまったのは俺の妹、桐乃である。 成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能。更には読者モデルまでつとめる完璧超人。 地味メンで成績平凡、スポーツ凡庸な俺なんかとは比べ物にならない人種……なのだが。 いかんせん、今の言動を御覧あれ。そう、どれだけもの凄まじいスペックの持ち主でも、あの性格じゃあどうしようもない。 更に!あの派手な見た目に反して重度のエロゲーオタク。どこをまかり間違ってこんな道に入っちまったんだか。 まあ、これほどのデコボコ兄妹だ。数ヶ月前までは俺自身のコンプレックスもあり、会話すらろくにしない関係だったんだけどな。 紆余曲折……本当に色々な事があり、今ではお互いそれなりに影響しあいながら生活している、というわけだ。 ……ところで、今俺はとあるレポートをつけている。 別に学校のレポートと言うわけではない。 ただ、もしもこのレポートが正しい情報に基づいた物で……さらに完成の日を見れば、俺の生活上のストレスは大きく改善される事だろうと思う。 そのレポート……名付けて、 『高坂桐乃 癖毛研究レポート(KKR)』 前述した通り、俺はここ数ヶ月、前よりもずっと桐乃と接する機会が増えている。 それはつまり、桐乃の罵詈雑言に晒される頻度が増えた事であり、桐乃を観察する時間もより増えたと言う事だ。 そんな中、俺はある事に気が付いたのだ。 桐乃が感情を露にする際、俺を口汚く罵る際、エロゲーをやる際、漫画を読む際、ケーキを食べる際! それぞれの瞬間、桐乃の癖毛が特徴的な動きを見せるということに! 因みに『桐乃の癖毛』というのは、左右にぴょっこりと跳ねた、あの毛の事を指している。 考えてみれば、あれだけお洒落に気を遣う桐乃が、自らの癖毛をそのままにしてモデル活動に勤しむだろうか? いや、俺自身は下手にストレートパーマなんぞかけられるより、愛嬌のあるあの髪型の桐乃が好きゲフン個性があっていいと思うのだが。 とにかく俺はあの癖毛に、桐乃自身ですら無意識下でしか気付いていないような何かの意味があるのでは……と関心を持ったわけだ。 もしもそれを解明出来れば、普段から憎まれ口しか叩かない桐乃の本心が分かるかもしれない! なんせ、あれだけ素直じゃない桐乃だ。ちょっとくらい明け透けな方が可愛いってものだろう。 というわけで、俺は俺自身の平穏の為にも、行動を開始する!さあ諸君!一緒に桐乃を追いかけようではないか! 117 名前:【SS】2/5[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 17 00 49.94 ID BBmXsgBs0 [4/9] KKR調査 その① ~怒りの表現~ まず調べるべきは『怒っている時の癖毛の動き』だろうと思う。 何せ、桐乃の自己表現の大半がこれで説明できてしまうのだ。相当頻繁に出る動きだとも思うし、最も調べやすいだろう。 ……だが、KKR調査団は、「一応怒鳴っちゃいるが、怒っているか分からない」などという曖昧な状況での調査をよしとしない。 確実に桐乃が怒るであろう状況を作り上げ、観察しようと思う。 さあ、行動開始だ! 午後2時55分。 リビングに降りた俺は、桐乃の姿がない事を確認し、冷蔵庫へと歩み寄る。 ゆっくりと冷蔵室を開けると、俺は密かにほくそ笑む。 前情報通りだ。多くの食材の中……桐乃が買ってきたケーキが鎮座している。 こいつは近場で売っているイチゴ付きのショートケーキだ。 味はまぁそこそこだが、お値段が大変リーズナブルな一品で、コストパフォーマンス上、良く桐乃が購入する。 桐乃にとってケーキなどの嗜好品は、モデルと言う職業上、幾らスポーツをやっているといっても過剰に摂取する事の許されない食べ物。 それがゆえ、桐乃の中でケーキの優先順位は相当に高いと思われる。 だが! 俺は! それを! 貪り尽くす! 簡易包装された箱とラップを乱暴に取り払うと、白くコーディネートされた可愛らしいショートケーキが露になる。 それを一切の遠慮なく、鷲掴む! そして、食す!! 一口で半分を食べた俺は、続いて赤く実ったイチゴに…… 喰らい付く! 咀嚼、そして嚥下! 階段を下りる音が、廊下からかすかに響いてくる。……さあ、ここからが本番だ。 「……っ!あ、あああああああああああああああああ!!」 ドアを開けた瞬間、桐乃が般若の形相で叫び声を上げた。 ……この瞬間!この瞬間の為の小細工だったのだ!見るんだ俺!KKR調査団の一員として、見届けろ!癖毛の動きを……! 桐乃の平手が視界を掠める中、俺は確かに見た。 真横にビシッとのびた、桐乃の癖毛を。 「この馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!」 調査① 結果:怒りの表現 = 癖毛が真横にビシッとのびる。 118 名前:【SS】3/5[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 17 02 03.32 ID BBmXsgBs0 [5/9] KKR調査 その② ~悲しみの表現~ 「あ、あんた、あたしが今朝から楽しみにしてたケーキ、何で食べんの!?信じらんない!マジ信じられないんですけど!?」 「お、落ち着け桐乃!これには深ぁ~いわけが……」 「ひとのケーキ勝手に食べるのに、深いわけなんかあるか!死ね!死んじゃえ!」 桐乃は平手だけでは気が収まらないらしく、頭や背中など、殴りやすいところを殴りつづける。 く、くそう……痛い。だが、ここは暴れさせるだけ暴れさせてやらないと、次の調査に結びつかないんだ……! 桐乃が暴れつかれてへたり込むまで、俺はその暴力に耐え続けた。いや、これは自業自得だから仕方ないのだが。 「……ホントに楽しみにしてたのに……最低……!最っ低!」 やっとへたり込んだ桐乃は、俺への怒りからケーキの喪失感へと気分を移ろわせる。 先ほどまで突き刺さんばかりに真横にのびていた癖毛が、急に力がなくなってしまったかのように下にへろへろと垂れてしまう。 心底がっかりした顔で、力なく呟く。 「今すぐ買ってこないと、絶対に許さないんだから……!」 調査② 結果:悲しい時の表現 = 癖毛が力無く垂れ下がる。 KKR調査 その③ ~喜びの表現~ 恨めしく睨み付ける桐乃の視線を浴びながら、俺は深く頭を下げる。 「すまん!お前のケーキを勝手に食っちまったのは謝る。だから事情を聞いてくれ!」 「……によ、事情って」 未だに納得できない表情。当たり前だ。あのケーキを桐乃が楽しみにしていたのは、帰ってきたときの様子から知っている。 それを奪ってしまったのだから、ちょっとやそっと謝られたからといって許せるわけが無い。 だが。甘く見るなよ、諸君。 この俺が、可愛い妹をただ悲しませるような事を思いつくとでも思うか? 「その……な。実は、俺もケーキを買ってきてたんだ」 「……は?」 俺は、冷蔵庫の奥から……見つからないよう、食材の後ろに隠しておいた……ケーキの箱を取り出した。 「そ!それ、都内の超美味しいお店のケーキじゃん!!」 そう!桐乃がケーキを買ってきたことを知った俺は、都内有名店の、お高くて超美味い、ショートケーキを買ってきていたのだ。 気になるお値段は桐乃の買ってきたケーキの倍近くするため、場所の遠さも相まって、桐野ですらなかなか手を出す事の出来ないケーキ。 これが、俺の切り札だ! 119 名前:【SS】4/5[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 17 03 10.88 ID BBmXsgBs0 [6/9] 先ほどのケーキの包みが質素に見えてしまうような可愛らしい箱を、おもむろに開く。 「お、おおおおおおおおおおおおお!美味しそう……!」 桐乃の癖毛が……ぐるぐると回っている。まるで犬が尻尾を振るかのように。 唖然としてその光景を見守る間も、桐乃の視線はケーキに奪われたままだ。 それにしても、目がハート型になっていてもおかしくないくらいのはしゃぎ様。我が妹ながら可愛……いや、分かりやすいものだ。 調査③ 結果:嬉しい時の表現 = 癖毛がくるくると回る。 「あ、あんた、これどうしたの!?」 「……最近、お前とも結構話すようになっただろ?たまには、お前の好きなケーキでも一緒に食べながら、話が出来たらいいな……と思ってたんだが」 そこで俺は、バツが悪そうに頬を掻く。 「だけど、そう思ってた矢先に桐乃が嬉しそうにケーキを買ってくるが見えてさ。なんか悔しくなって……つい、衝動的に……」 「馬っ鹿じゃないの!?どんだけガキなのよ!」 「だってよ!お前はケーキの食べる量とか制限してるし、お前の買ってきたケーキを食べちまったら、俺と一緒に食べれねぇじゃねぇか!」 「あ、あんた……そんなにあたしと一緒に食べたかったの?……キモッ!シスコンすぎ!」 「何とでも言えよ……だけど、お前のケーキ勝手に食ったのは悪かった……。どんな理由があるにせよ、大人げねぇことをしたよ……」 この言葉は本心からだ。 どれだけ美味しいケーキを用意しようとも、一瞬でもあんな悲しそうな桐乃の姿を見るのは心が痛かった。 だが、これで癖毛の反応が掴めた。これからはああならないようにしていけばいいんだ。 そう、あんな風に垂れ下がった状態に……って、 あれ? 「ま、まあ、あんたがそこまで言うなら!一緒に食べてあげない事も無いけどさ?」 顔を背けてそんな事を言う桐乃の癖毛は、ピコピコと上下に動いていた。 新しい動きだ……。 まだ俺の知らない桐乃の感情があるんだ。俺は頭の中のKKR調査手帳に、忘れないようしっかりとメモした。 調査④ ○○時の表現 = 癖毛が上下にピコピコと動く。 諸君。俺は今、命をかけた潜入作戦に従事している。 ここは、桐乃のベッドの下。桐乃がトイレに立った際、密かに潜り込んだのだ! 何故こんなところにいるのかって?愚問だ。 桐乃がエロゲーをやっている時の感情表現を、この目で確かめるために決まっているじゃないか! くれぐれも言っておくが、妹の着替えとかそういったものを覗きたい!などと言う邪な気持ちは、これっぽっちも含まれていない。 ……含まれてないよ?ホントだよ? そして今こそが佳境!桐乃が愛してやまないりんこルートの再プレイを始めたところなのだ! 着替えのシーン、下手くそな歌を密かに歌うシーンなど、兄貴として見るに忍びない場面もしっかり堪能し……じゃなく、頑張って乗り切った! さあ見てやろうじゃねぇか!お前の感情表現を! 121 名前:【SS】5/5 fin[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 17 17 06.70 ID BBmXsgBs0 [7/9] 「ふぁぁぁぁぁあんあん!りんこりん~♪可愛いよぉぉぉ!」 ……妹のなまめかしい声を聞いた瞬間、自分のいる場所じゃない事を急速に悟るも、俺はどうしようもなかった。 ヤバイ……痛々しすぎて直視できねぇ……! 「りんこりん!?ダメだって!そ、それはエロ過ぎるよぉぉ♪ウヒヒヒヘヘヘヘヘ♪」 我慢だ……我慢しろ。 「ちょ、いいの!?りんこりんの初めて、もらっちゃうよ!?」 が、我慢だ、我慢……!! 「ふぁあああ!もう我慢できないよぉ!ラブラブ気分マックスキター!!今すぐ可愛がってあげるぅ!」 「ま、ま、待ってくれええええええええええええええ!!」 ダメだった。もう我慢の限界とかそんなんじゃなく、本能がここにいちゃヤバイと告げたのだろう。 無意識のうちに俺は大声を出して飛び出していた。 「はへぇ?」 まだりんこりんラブラブモードの桐乃は、一瞬理解できないような表情でこちらを見返す。 そのとき、俺は確かに見た。 ラブラブモード時の桐乃の感情表現は……『癖毛がピコピコと上下に動く』だ! ん? おかしいな、この動きは確かどっかで……。 「あ、あああああああんた……!」 「は?」 正気に戻った桐乃が、顔を真っ赤にしてわなわなと震えている。 ああ、俺、人生終わったかもしれない。 ならばKKR調査団諸君!俺の尊い犠牲を無駄にせず、最期の俺の報告を聞いてくれ! 見ろ!これが俺の愛しい妹……桐乃の! 「この、変態!死ねええええええええええええええええええええええええ!」 桐乃の、愛情表現だぁぁぁぁぁぁ! 調査④ 結果:ラブラブモード時の表現 = 癖毛が上下にピコピコと動く。 終わり。 リスペクト http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=18113119 -------------